おかあちゃんが悲しいと、ウチも悲しいのニャ。
おかあちゃんは、子どもがいなくて悲しいのやて。
結婚してから、おとうちゃんの失業やら、仕事の忙しさやら、じーじやばーばの病気やら、いろんなことがあって、
赤ちゃん産むチャンスなかったんやて。
はじめは欲しくなかったから、それでもよかったけど、
だんだん悲しくなってきたんやて。
けど、もうおかあちゃんも40近くなってきたし、
おとうちゃんは45超えたし、じーじやばーばたちも、ますます病気をしたりして大変やから、
もう子どもは産まへん、って、決めたんやて。
なんべんもなんべんも考えて、いっぱい泣いて、決めたんやて。
けど、いっつもヨソのおばちゃんたちに言われるんやて。
「なんで子ども産まへんの」って。
はじめは、「えーっ、わたしがまだまだ子どもやしー。そんなに欲しくないしー」
って、笑って答えてたんやて。
いちいち「カテイノジジョウ」とかいうのを説明したり、
カワイソウぶるのイヤやったからなんやて。
そのうち40にもなったら、誰もそんなん言わんようになるわー、って
おかあちゃん、よう笑って言うてはった。
けど、やっぱりまだ言われるんやて。
「女として生まれたからには、子どもひとりは産まんと」って。
一回り以上も下の若いママさんにまで「めめさんの老後は寂しいですね」って
しみじみ哀れんだように言われるんやて。
「みんな、おかあちゃんのタメを思って、言うてくれてはるのやけどね」
昼間は忙しさで忘れてられるけど、晩になったら悲しくなる、って。
「かりんさんも赤ちゃん産めやんようにしてしもて、ごめんね」って言わはる。
なんでゴメンネなんかな?
ウチはようわからん。
赤ちゃん産めないと、そないに悲しいんかな??
ウチはおかあちゃんがおるから、ウチの赤ちゃんは要らんよ?
おかあちゃんが悲しいと、ウチも悲しいのニャ。
「かりんさんを飼うたんは、なにも子どものかわりにしようと思ったからやないんよ」
っておかあちゃんは言う。
うん、そうやね。ウチは誰かの代理なんてイヤやもん。
ウチは、ウチのまんまを、おかあちゃんに好きでいてほしいもん。
「けど、かりんさんのことは、子どもとおんなじくらい可愛いよ。
ヨソのママさんたちが自分の子どもを可愛がるよりずっと
おかあちゃんは、かりんさんのこと大好きやで」
うん。知ってるよ。
おとうちゃんも、はじめはウチのことおっかなびっくりやったけど、
いまは可愛がってくれるし。
ウチは、おとうちゃんとおかあちゃんのこと大好き。
「ロウゴノメンドウ」とかはよう見てあげやんけど。
いまがシアワセ。
おかあちゃんも、いまシアワセ?
三人一緒に、いっぱいいっぱい、シアワセでいよね。
おかあちゃんが悲しいと、ウチも悲しいのニャ!!