さくらとバニラが我が家に来て数ヶ月、とうとうバニラに発情期が訪れた。
生後六ヶ月、結構早くきてしまった。
「あんぎゃらぐえ〜 あんにゃぁ〜」
しょっちゅうという訳ではないが、時々今までと全く違う鳴き声で鳴きまくる。
「そろそろ避妊手術の時期なのかな〜…病院に予約しないとね」
「避妊手術って結構お金かかるんだよねぇ?給料日までちょっとバニちゃんに我慢して貰おうか」
「さくらはまだなのにね」
給料日まであと2週間という時期、お金が乏しかった私たちは少々我慢することにした。
それがそもそもの間違いだったのだ。
何度となく我が家から逃亡を繰り返すさくらとバニラ、そして鳴き声、ペット不可の賃貸アパート。
私たちはご近所に目を付けられていた。
そんな休日の朝、とうとう魔の電話がかかってきた。
『すいません、アパートの管理会社の者ですが』
「はい」
『お宅で猫を飼育してらっしゃいませんか?』
ギクッ「は、はい?」
『申し訳ないのですが即刻処置をしていただけない場合は強制退去ということになりますが…』
「え!?」
『ご近所から苦情ではないのですが、お知らせをいただいて、こちらも昨日調査に伺いましたもので…』
あいたたた…。見られていたのだ、しかも管理会社の人間に。もう言い訳は通用しない。
チクったのは誰だかは想像が付いていた。
でっかいバイクをどかんと駐輪場に止めていて、じゃまなので退去してくれという張り紙を張られていた持ち主が、腹いせに猫たちのことを報告したのだ。
といってもペット不可のアパート、もともとは私たちが悪いことは明白だった。
「わかりました、退去します」
私たちはペットOKのマンションを探し出し、強制退去を言われた翌月に、早々に引っ越すことにした。
【続】