死んだ愛犬ぺぺはオスであった。彼は私たちとの11年間の年月の最初から殆どの年月、私より妻の味方であった。その理由は彼がオスだからであろうと思っていた。家畜でも、例えば羊のオスなどは人間のメス(女性)には敵対せず、親愛の情を示すものである。ただ愛犬ペペが私より妻の味方をするのは、私と妻の会話から妻の方がボスなのだと断定したのであろうと思われるのである。犬も狼も強いものをボスとして認める習性がある。いづれにしろラブはメスであるから、私のやり様や立ち回りの如何によっては、今回は妻よりも私の方に分があると密かにほくそ笑んだのだが、結果は私にとっては惨憺たるものであった。彼女はメスのくせに妻には完全に心を許しているが、私との関係では頑として一線を画し続けているのである。