何も労せずしてラブの完膚なきまで絶対の信頼を得ているのは、忌々しい限りであるが我妻である。ラブは早朝5〜6時頃に出掛けて彼女の別宅、即ち例のご夫妻宅へ行き7時頃迄には帰ってくる。妻が7時半頃出勤するとラブもすかさず出掛けてしまう。妻が帰る頃には何処からともなく帰って来る。彼女が妻の居ない時に帰って来るとすれば、それは大急ぎで腹ごしらえの為に餌を食べに帰るのである。要するに私とは決して仲良くしたいなどとは思ってもいないのは明々白々なのである。通り掛かりの観光客には愛想を崩して甘えたなき声を出して擦り寄って行くのであるが、戸外で私と出会い、近づけば忽ち逃げて行くのである。彼女を捕まえるには彼女がじゃれ付いている観光客に頼んで、そのまま捕まえて貰うより手はない。