ーー 前回からの続き ーー
その後もまむは閉じ込められた生活には慣れる様子も無く、鳴き続ける毎日だった。私はまむにも自分にも 「あと○日だから頑張って!」と言いながら過ごした。
まむもくっちゃも喜ぶだろうと思い、時々面会させた。くっちゃは 「お母さ〜ん♪」という感じでケージに駆け寄って行ったが、驚いた事にまむはくっちゃに向かって 「フーッ!」と威嚇した。これにはくっちゃも私もビックリ。 「え〜っ、そんなあ...」
あの愛情深いまむがどうしたというのだろう。私は大変な間違いをしてしまったのかと、うろたえた。しかし避妊手術をしたからって、こんなにすぐに母性愛が無くなる筈は無く、手術後も母乳を与え続けている母猫はいっぱいいる。
まむはくっちゃに警告したのかも知れない。「来ちゃ駄目!閉じ込められてしまうわよ。痛い目にあわされるわよ。」と。きっとそうだ。私はそう思うことにした。
やっと待望の10日目の朝を迎え、病院へ。手術の傷痕は綺麗になっていて何の問題も無かった。エリザベスカラーもとれた。しかし左目の上瞼から少し幕が覗いていたので診てもらった。ストレスを溜めた為、ヘルペスウィルスが暴れたようだった。目薬を貰って帰った。
帰宅して庭でキャリーバッグの蓋を開けてやると、まむはピョンと飛び出し、そのまますぐに走って行ってしまった。「わ〜い、自由だ!自由だ!にゃ〜ん♪」
おなかが空いたら帰って来るだろうと思っていた。10日間、与えられたキャットフードを食べていたのだから。しかしその考えは甘かった。夕食時になってもまむは姿を見せなかった。家の近くを捜しに行った。猫のテリトリーはそんなに広くない。草むらを散策中のまむを見つけた。逃げて行く様子も無く、と言って近付いて来る様子も無く、自由を満喫しているようだった。しばらくはそのまま自由にさせておく事にした。気が向いたらその内帰って来るだろう。
毎日朝夕とまむの食事を庭に用意しておいた。だんだんと食べた形跡が多くなっていった。くっちゃと会わせると、お互いに顔をくっつけるようになった。その内、一緒に追っかけっこや隠れんぼをして遊ぶようになった。ストレスが無くなり、目も良くなっていった。
でもまむは家の中には絶対入って来なかった。朝晩はだんだんと肌寒い季節になっていた。犬小屋を買って来て庭に置くと、そこでまむがちゃんと寝泊りしてくれるようになった。
こんなふうにしてまむはぷりん家の庭猫になった。
手術後2ヵ月半のまむ
この頃にはもうすっかり庭でくつろげるようになっていた。