私が、手を伸ばすと小さな天使は顔を上げて私の目を見た。
その天使の顔は片目は、目ヤ二で閉ざされ、体は蚤だらけだった・・・
普通は、
[こんな汚い猫、触るのも嫌だ]
と思うかも知れないが、その時の私達は普通ではなかった。
私は、その小さな天使を抱え上げ、母は携帯で猫好きの知り合いに、近くに動物病院があるかを聞いた・・・
動物病院に着くと、すぐに診察室へ通された。
慌てる私達を他所に、獣医は冷静に天使の治療をしていく。
閉ざされた瞳は、生理食塩水を染み込ませた綿で軽く擦ると、
金色に、か弱く光る瞳が現れた・・・
「目ヤ二でくっついてただけだね」
獣医は軽い口調で言うと、助手に
「レントゲン一応撮ってみよう」
そう告げると、天使を抱き、助手を引き連れて奥に消えていった・・・
しばらくして、レントゲン写真を持って獣医が診察室に戻ってきた、
天使は助手に抱かれて獣医の後に続いた。
「う〜ん、見えるかなこれ、骨盤折れてるね」
私達にレントゲン写真を見せるとそう言った。
「は!?」
私達は声をそろえてそう言った。
「骨盤が折れてるの、多分車と接触したか、人に蹴られたか・・・」
獣医は痛々しそうにそう言った。
「治す事はできるんですか?」
母が聞いた。
「治療と言う治療はできないね、これくらいの子だと骨がバターみたいにやわらかいから、ボルトが刺せないんだよね・・・糠に釘だね」
獣医はそう言うと、天使を助手から受け取り、診察台に乗せた・・・
天使は、折れた翼をかばいながらこちらを向いた、
普通はここで「にゃぁ〜」と猫が鳴いて、潤んだ瞳で飼い主を見つめるのだろうだが、
天使は違った・・・、
{じと〜〜〜〜}
ひねた目でこちらを見つめていた・・・
私は、小さな天使に恐怖を覚えた・・・・・