片目猫「十兵衛」と「うちのひと」達はそれなりにやっています。

1、猫の十兵衛
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・・・
 
 
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あ、どうも。
なにしろぼくは、食う・寝る・遊ぶの三拍子揃っているものですから。
 
えー、せっしゃは柳生十兵衛というものでござる。
 
それっぽく、名乗りをあげました。
初回は自己紹介をしなければなりませんね。
 
 
ぼくは愛知県の知多半島でうまれたねこです。
兄弟のうちで一番大きくてつよくて冒険心に満ち溢れたねこが、
ぼくでした。
 
おりしも9月、いい季節でした。暑くも寒くもないころです。
ぼくは母猫が兄弟のおしりをなめている隙を見て、
待望の乳離れと共に旅に出ました。
 
乳離れをしたということは、それなりに「ねこ」ができあがったということです。
いつまでもははねこにおしりを舐めてもらっていては、
りっぱなねこにはなれないように思ったぼくは、
知多半島を南下し、いずれは海に出ようと思っていました。
 
しかし、ぼくは10月の30日くらいに窮地に陥りました。
 
結果的には、早すぎたフーテン生活のために、
食べ物も探せず、雨風をしのぐこともわからず、猫風邪にかかりよろよろ、
ぼくは道端で死んだように倒れました。
右目がもう見えません。
身体をなにかがかじります。
 
 
だれかが、ぼくをつまみあげて風の通らないところにいれてくれました。
(あとできいたら、ダンボール箱のはいった「燃えるゴミ」の袋だった)
それはラーメン屋さんの裏にありました。
ラーメン屋さんは、ごみを片付けに来てぼくを見つけました。
 
「またねこだ」
 
ぼくは、二匹目のラーメン屋にたどり着いたねこだったのです。
ラーメン屋さんは心優しいのですが、
すでに犬2匹猫1匹を育てていました。
しかもそのねこは、スポイトでミルクをやったくらいの赤ん坊だったそうです。
 
「ミルクをあげるからがんばっていきていきな」
 
あたたかいミルクを飲んで、元気が少しだけ出ました。
ぼくはこわかったので、感謝をして生垣にかくれました。
 
 
そしたら、これが運のつき。背中の毛がひっかかってしまったのです。
 
 
もうぼくには気力はほとんどなかったのですが、
おとこらしくもがいてもがいてもがいてもがいて、
ぶらさがり状態に状況を悪化させたのはいい思い出です。
うそです。強がりでした。あの時は泣きそうでした。
 
 
このままでは、飢え死にするしかないぞ。
 それはいやだと思いました。
 
 
声の限りになくというのは、ああいうことだと思います。
僕は6時間なきつづけました。
たすけて、たすけて。
誰を呼ぶのかもわからず、とりあえず、たすけてとなきました。
ぼくは限度を知らないので、ちからつき、死ぬ一歩手前まできたころ、
ラーメン屋さんが、またきてくれました。
 
「こんなところにぶらさがって…どんくさいねこだね。かわいそうに。でも、飼えないんだ」
 
ぼくはラーメン屋さんのおしぼりがはいっていたプラスチックの網カゴに
いれられました。それは広すぎて、はじっこにうずくまりました。
 
「ねこのひろばならなかまがいるから」
 
それはどこなのでしょう。
ぼくはもう一歩も動けませんでした。
 
「かわいそうに、右目がぐちゃぐちゃだね」
「びょうきのねこかもしれないよ」
「まだ赤ちゃんだって」
「うちではもう飼えないの…つらいけど、ねこのひろばに捨ててこようかと」
 
「かわいそうに」
 
ラーメン屋さんが、だれかと話しています。
 
「野良猫の溜まり場につれていっても、生きていけないかも」
「こんなに赤ちゃんなのに、めがつぶれて、むしだらけで、
かわいそうに」
 
 だれかが泣いています。
(泣きたいのはぼくなのに)
そのだれかがぼくを抱っこしました。
 
ははねこと離れて以来、だれかにさわりました。
ぼくは、あったかいので、ねむりました。
もう、にゃあとも声が出ませんでした。
 
 
 
 
 
ぼくは、ラーメン屋さんのとなりのいえのねこになりました。
 
のみだらけのぼくは、さむさと、さびしさと、はらぺこで、
死んでしまいそうだったのですが、
こうして九死に一生をえたのでした。
 
まあ、よくあるはなしです。 
 ねこですからね。
 
 
実は、ぼくは記憶は三日ももたないので、
がんばって事実と願望をおりまぜてつづってみました。
だいたいはそんなかんじです。
 
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これがその当時のぼく(600g)です。
まあ、すこしばかり無謀な旅立ちでしたね。
でも、終わりよければ全てよしというそうですから。
 
 
前略母上様。
ぼくはいまはわりあい幸せにやっているので、
心配しないでください。
(先日きょせいしゅじゅつというのをうけて、
タマなしですが。)
 
 
 
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PROFILE
十兵衛、生後1ヶ月と少々(推定)

拾われっ子。05.09.15頃生まれる。幼少フーテン時代に猫風邪をこじらせ、右目をだめにする。目の色は黄色。薄茶色のキリン模様で、手足は白い靴下着用。ひげは白でまばらにはえている。しっぽはつくしの生えたてに似ている。

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