昔々、あるところに黒と白の、そりゃ仲のええ兄弟が住んでおったとな。
弟の白は頭もよく、高い志を持った良い若者じゃったが、兄の黒は、ちょっとのほほんとした、はっきりいって抜け作にゃんこだったそうな。
今日も今日とて日向ぼっこしながら、将来の夢について仲良う語り合っておったとな。
おとうと「兄ちゃん、ぼく、大きくなったら、恵まれない全国のノラのためになるような仕事に就きたいんだ。」
あに「そうか、それは立派な考えだ。」
「俺は・・・寝て暮らしたい。」
おとうと「にいちゃん・・・。」
「・・・もうちょっと前向きに考えてみない?」
あに「はぐはぐはぐ♪」
「ん?」
「・・・んじゃ、いつまでも食い物に囲まれて生きたい。」
おとうと「・・・にいちゃん・・・(
うるうる)。」
あには長じても寝てばかり、目が覚めてるときは常に口をモグモグさせているという文字通りの怠け者となり、生涯寝暮らしたと。
おとうとは全国のノラの救済行脚の旅に出て、ノラ達から救いの神のようにあがめられたそうじゃ。
こうして兄弟は、それぞれ望みどおりの生き方をしたんじゃな。
ま、おとうとは確かに立派な子じゃが、面白みが足りんかのう。
その点あには、にゃんこらしいにゃんこといえようかのぅ。
爺の話は、これでおしまいじゃ。