ウチには二匹の猫がいる。どちらもウチで生まれたり子猫の時に買ってきたとかしたのではなく、遊びに来てそのまま居着いた猫だ。
クロはまだ生後2週間くらいで後ろ脚がふらふらしていた。
トラは隣の家の木に登っている子猫の時に見たことがあり、隣の家で生まれたが、その後ふらりと家出をして飼い主を替え、ウチの庭を横切っているうちに、居心地がよさそうなので何回か昼寝をするうち、飼い主の許へは時々帰るだけでウチに長くとどまるようになった。
それでも、生来の放浪癖が治らず、今も家出中である。
去年は8カ月も行方不明だった。生家のお隣さんに、どこの家にあげたのか訊いてみたが、自分で出て行ったから知らないのだというのだった。
今年の2月に突然帰ってきた。こっちの顔を見るなり嬉しそうにすり寄って頬ずりしたりしたから、ずっと帰って来たかったのだろう。何か理由があって戻ってこれなかったのだ。
行方が分からなくなって最初の1カ月の間、家内は心配した。
車にはねられたのだろうか?意地の悪い猫嫌いの歯医者に毒を盛られて殺されたんじゃなかろうか?
結局、奇麗にお化粧してもらって戻ってきたところをみると、飼い主と一緒にどこか別の地方に転勤かバカンスで行っていたのだ。
クロはトラより半年ほど遅れて我が家に来た。
最初は遠慮がちに、トラが入ってくると、クロは別の部屋のソファーに移した。そこでおとなしく昼寝をしていた。
そのうち、トラが餌を食べている時など、後ろからそうっと近づいて
尻尾を噛んだりするようになった。もちろんトラはだまっちゃいない。カーっと歯を向いて威嚇した。
クロは体が小さく柔軟で敏捷なので木のぼりが得意だ。
それと生肉が大好きだ。エビのむき身も好物だし、魚も食べるようになった。
トラは魚を食べない。一体にフランスの猫、ここのような内陸の山に近い土地の猫は魚を知らないみたいだ。川や湖で釣ってきた小魚を見せても臭いを嗅いだだけで食欲は刺激されないようだった。