
おいらはターゲットの視界に
静かに入ると、
まずは15メートルほどの
距離をとって腰を下ろした。
しばらくの間、
あやつとおいらの
・・・・睨み合いが続いた。
わずかに暮れかかった
静かな駐車場の一角で、
互いに向かい合って座る
ひとりと一匹のまわりでは
まるで時が止まったように
ゆっくりと空気が流れていた。
幸いにもその時間帯は、
このあたりは人通りがまったくないみたいで、
(これはほんとにラッキーだった!)
今は、周囲の雑音も
おいらの耳にはまったく入ってこない。
そんな中でおいらは、
ときどきあやつの名前を呼んでやるが、
それに対しても
特にこれといった反応はなく、
どうやらおいらのターゲットは、
目の前にいるのが
自分の飼い主だとはまだ気付いてないようだ。
(思ってたとおりやっぱとんでもないバカだった)
そんな膠着状態が15分くらい続いただろうか?
(ずいぶんとゆっくり時が過ぎていくように感じたけれど)
やがてあやつは、
「ニャー」とひと声鳴いて、
・・・・植え込みの中へ姿を消した。
それは特に慌てた様子もない、
ごくごく自然なにゃんこの動きだった。
しかしおいらは、
決してそのあとを追いかけたりはしない。
「発見しても絶対に追いかけてはならない」と、
こらまた探偵さんにやかましく指示されてたから。
いや、それでなくとも
最初に逃がしたときに
そのことは嫌というほど思い知らされていた。
(あのときの二の舞だけはこりごりだ。)
やがてあやつが植え込みの裏から
アパートの軒下に入るのを見届けると
おいらは静かに立ち上がり、
尻の汚れをポンポンとはたいてクルマにもどった。
そしてクルマにたどりつくとすぐに
トランクをガチャと開けて、
中から探偵さんにずっと借りっ放しの
・・・・捕獲機を取り出した!

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