おいらが覗く双眼鏡の中で、
あやつは
わずかに沈みかけた
日の光をあびながら
体表がすっかり汚れてるのか
毛の色が幾分くすんで見えたが、
とにかく両方の目を細くすぼめて、
呑気に植え込みの前に佇んでいる。
・・・・おい、おまい。
実に久しぶりにお目にかかれて、
・・・・まっこと光栄でス!
ところで1つ聞きたいのだが、
人の苦労も知らないで
チミはなにそんなところでのんびりと
・・・・ ひ な た ぼ っ こ し て ん だ ?
(いや〜ぁ実際に見て、自分のにゃんこだと一発でわかりまシた。)
そこでおいらが双眼鏡を覗いている間、
隣では通報者のおばちゃんが
「えっ、やっぱりあの猫?」
「やだあ〜、逃げたらどうしよう!」とハラハラしている。
でも不思議なことに、
そのときのおいらは自分でもびっくりするくらい
・・・・冷静だった。(家電販売店の餌場のときと同じだ)
だって、発見したときのシミュレーションは
探偵さん相手に何度も繰り返してたし、
そんでもって猫の場合は
居場所さえわかってしまえばあとは時間の問題だって、
・・・・こらまた探偵さんに教わってたから。
「おばちゃん、ありがとう。」
「でも、あとはもう大丈夫です。」
「身体が冷えるから中で待っててください。」
「捕まえたら、まっさきに見せに行きます。」
おいらがそう言うと、おばちゃんは不安そうに
「そう? じゃあ頑張ってね」と言い残して自宅に入っていった。
そいつを見届けるとおいらは、
・・・・さて、これからどうするべや?と
しばらくあれこれ考えたが、
とりあえずは嫁さんに報告することにした。
「えっ、ほんと?見つかったの?」
「絶対、絶対捕まえて連れて帰ってきてよ!」
次に探偵さんにも電話をした。
「そうですか、見つかりましたか。」
「あと少しですね。ぽっきいさんなら大丈夫ですよ。」
「頑張ってください!」
「わかりました。やってみます!」
「では、またあとで電話しますね。」
そう言っておいらは、
携帯の電源を静かに切ると、
(途中で呼び出し音がなったら台無しだ)
まずはいったん、
祈るように大きく天を仰いだ。
見上げた先には
わずかに暮れかかった空を
ゆっくりと雲が流れていくのが見える。
(ああ〜、今日はほんとに良い天気だ。)
そこで静かに目を閉じると、
ドタバタしてて今まで気づかなかった秋の風が
そっと優しくおいらの頬を撫でていくように感じた。
「・・・・よしっ! じゃあ、そろそろ行こうか!」
そうつぶやいて、
おいらはふたたび視線をもとの位置に戻す。
その視線の先には、
まだのんびりとあやつが佇んでいた。
「いいか、そこでおとなしく待ってろよ!」
おいらはひとことそうつぶやくと、
意を決したように
ひとつ、ふたつ、大きく深呼吸をして、
やがて、あやつのいる方向へと
・・・・静かに歩きだした!

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