もうだいぶ前に亡くなった父の事で、今でも鮮明に覚えてる思い出がある。
確か小学生の頃だと思う。
父は永く遠洋漁業のマグロ船に乗っていた。年に一度、永いと1年半に一度しか帰ってこないし、
帰って来ても数ヶ月間しか一緒に居らず、小さい頃の思い出と言ってもそう多くない。
帰港先の三浦三崎での事だ。
母に「お父さんが寿司屋に居るから呼んで来て」
と言われ迎えに行った。
父はカウンターに座っていた。
まだ昼間だったから、ちょっと小腹が空いたから食べに行ったって感じだった。
「お前も何か食べるか?」と聞かれ、
「かっぱ巻」と答えた。
美味しかった。
「じゃあ、そろそろ帰るか、おあいそ」
川谷拓三似の板さんは答えた。
「5万円です」
ええっ!ご、5万円!?
かっぱ巻分の端数も出ずにきっちり5万円!?
八百屋のおじちゃんが「はいキャベツ100万円だよ!」と言うのとは訳が違う。
前に書いたニャロメの万博の本を買って貰った頃だから1970年頃の話である。
その頃の5万円とはいかほどのものか?
寿司ってそんなに高いのか?
て言うかマグロが高かったんだろう。
マグロ船に乗ってる父が食べるマグロだから、よほど美味しい所を使ってたんだろうと想像する。
そういえばボーナスって言ってよくマグロ1本持って帰って来てたけど、1本50万だか100万だかって聞いた記憶がある。
すごいね!高級魚だったんだね!?
今後、諸事情によりマグロの漁獲高が減るらしい。
別にいいんじゃないですか?日常的に食べられなくても。
年に一度、数年に一度、一生に一度しか食べられないってのも「ありがたみ」があっていいじゃないですか?