今年読んだ本で、面白かったものはブログに掲載していますが、
本を読み始めたのは3年位前です。
その中で、面白かったものを、覚えている限り紹介します。
◇「終末のフール」伊坂幸太郎著
数年後に隕石の衝突で滅亡が確定している地球の、ある町の住民達のお話し。
最初は略奪や犯罪と、荒れた人々だったが、
終末までは数年あることを考えると、そんなことをしていては無駄だと気づき、
今は平穏を取り戻し普通に暮らしています。
ショートストーリー数編で構成されていて、
読んでいくうちに相関図が見えてくるのがこの人の作品の特徴です。
特に面白かったストーリーは「太陽のシール」。難病の子供を持った家族の話しで、
彼らは滅亡をむしろよかったと思っているのです。
なぜなら、普通に時が経てば、いつかは子供を残して自分達は死を迎えるから。
一緒に死ぬのなら、そんなことは気にしなくてもよいから。 なるほど。
◇「陰日向に咲く」劇団ひとり著
短編集です。しかし読んでいくと、ところどころ登場人物がリンクしていて
全体でひとつのストーリーになっています。
お笑い芸人の書いたストーリーだとたかをくくって読むと、びっくりします。
本業が作家の人でもなかなかここまで完成度が高く、面白い話を書ける人は少ないと思います。
◇「アブサン物語」村松友視著
日比谷公園で拾ったキジトラ猫。彼(村松)は猫の名前「アブサン」と名づけ、
かなり可愛がる。アブサンは20年ほど生き、天寿をまっとうするが、
例え天寿を全うし、猫としては幸せな生涯を送っていたとしても、
著者が生涯の伴侶と思うほどに、その死は辛く、悲しいものでした。
和田誠さんのアブサンのイラストの装丁が可愛らしい。
◇「さおだけ屋はなぜ潰れないのか? 身近な疑問からはじめる会計学」山田真哉著
身近な疑問から考える会計学の本です。
読んでいると目からうろこが落ちます。
内容が興味深く、また、会計学も理解できた気になります。
◇「イン・ザ・プール」奥田英朗著
変人精神科医「伊良部一郎」と、そこに尋ねてくる患者のエピソードの短編集です。
伊良部一郎の行動には、思わず噴出してしまうこともあります。
著者の奥田英朗はこのシリーズの全作「空中ブランコ」で直木賞を受賞しました。
こちらも面白いです。
◇「サウスバウンド」奥田英朗著
最近、映画化しました。映画の方の評判は悪いようですね。
しかし原作は面白いです。
元過激派の父と母。父親の違う姉。小学生の自分。
前編は中野が舞台になっています。
小学生の息子がヤクザまがいの中学生にカツアゲされていることを知り、
父親が闇討ちの仕方を教えるあたり、、、笑ってしまいます。
後半は奄美(だったかな?)に舞台を移して、そこを観光開発しようとする
業者と真っ向対決する、痛快感がまた面白い。
◇「沖で待つ」絲山秋子著
芥川賞を受賞した作品です。
芥川賞って、面白くは無いですが、これに関しては面白かったです。
亡くなった親友の遺言を実行するために、パソコンを破壊する女性主人公。
でも、パソコンを破壊しても、結局秘密にしておきたかった内容はばれてしまうのですが、
これがなんとも「じん」とするもので。。。
◇「東京タワー」リリー・フランキー著
スペシャルドラマ化され、連続ドラマ化され、映画化されましたが、
どれも原作には及びませんですなぁ。
起承転結のストーリーがあるわけでもなく、私小説なのですが
これを読んでいくと、えらく感情移入してしまうのです。
後半になると、オカンの死は確実に予測できるので、読みたくないのですが
ページをめくる手を止めることができないのです。
途中にあった言葉「世界滅亡の予言よりも必ず訪れるオカンの死の方が怖かった。」
この言葉がとても重いです。
◇「バカの壁」「死の壁」養老孟司著
読んでいると目からうろこが落ちます。バカの壁では、
知識として知っていることと、実体験で身についていることの違い。
また興味の持ち方で、好奇心、探究心が変わってくること。
本人は知っていると自覚していることでも、興味の違いで、その内容には大差があること。
そして死の壁では、現代社会では死を忌み嫌っているために
必要以上に死を恐れてしまうこと。
印象深いエピソードでは、集合住宅のエレベーターでは狭すぎて
棺桶が運べないということです。
人には必ず訪れる死を、住宅設計の際に考慮していないあたり。
人の死は病院で操作される時代になっているようです。