久しぶりのツーリング
集合場所で最初に声をかけてくれた彼女は
色白で長い髪をみつあみにした小柄の美しい女性でした。
目的地に向かう途中で事故は起こりました。
正確な原因は分りません。
残されたスリップ痕と周りの話から想像するしかありません。
スピードの出ていない状況で、きっと彼女はフロントブレーキを強くかけてバランスを崩したのだと思います。
彼女は転倒して反対車線に飛び出してしまいました。
そしてトラックにひかれてしまったのです。
私はその瞬間を見ていません。
現場に戻った時は既に彼女は病院へ運ばれていました。
私が見たのは
渋滞の車
遠くなる救急車の赤い光
警察官の怖い顔
運転手の憔悴しきった様子
一緒にいた仲間達の心配そうな顔
血痕のない道路
近くを走っていた仲間達は警察官に繰り返し質問を
されていました。「どうしてブレーキをかけたのか?」と
残念ながらその正確な理由は本人じゃないと分りません。
推測しかできないのです。
仲間達全員の免許をコピーされ電話番号や勤め先を
聞かれました。
事情徴収の間に付き添いで救急車に乗った仲間から
彼女の様子が伝えられました。
「足の骨折だけで頭は大丈夫とのことです」
みんなの顔が一斉にほころびました。
「良かった!又一緒に走れる」と喜んでいました。
それから10分もたたないうちに連絡がはいりました
「心臓がとまりました。心臓マッサージをしています」
凍りつきました。
何の話か分りませんでした。
だって、彼女は数分前まで笑ってそこにいたんです。
皆で記念写真を撮った時、彼女はそこで微笑んでいたんです。
バイクの恐ろしさを嫌というほど感じました。
大好きなバイクの怖さは知ってました。
でも、自分は大丈夫と根拠のない自信があったのです。
今、現実に起こっている目の前のことは自分だったかも
しれない。と強く感じました。
駆けつけた病院で彼女は心停止状態でマッサージを受けて
いました。
知らせを受けて駆けつけた両親、恋人の顔を今でも鮮明に
覚えています。
彼女の心臓は二度と動きませんでした。
重い気持ちで帰路につきました
途中でファミリーレストランに寄り食事をしました
皆、明るく何気ない話をして笑っていますが、フト気づくと
どうして事故になったんだろう?と話題が戻っていました。
皆でいる時は明るくなれても、一人になれば思い出すのは
彼女のこと。
後一秒早かったら! 後、一秒遅かったら!!
きっと彼女は助かっていた。
トラックじゃなくて乗用車だったら?
対向車線に車がこなかったら?
そんな事ばかり考えていた。
考えてもどうしようもないけれど
こんな事は始めてで、かなり動揺していたのです。
バイクの怖さというものが初めて分った日でした。
今日は雨でバイクに乗っていません。
返って良かったように思います。自分の中で整理がつくまで
乗らないほうがいいのです。
バイクは、とても素晴らしい乗り物です。
でも、とても怖い乗り物でもあります。
これからもバイクに乗る為に、私はどうすれば事故に
合わないように乗れるのか考えます。
バイクを乗る方が、もし読んでいるとするなら、どうか
バイクの危険性を今一度、考えてほしい。
無茶な運転をしていませんか?
自分の技術にあったバイクを選んでいますか?
「自分は大丈夫」と高をくくっていませんか?
ほんの些細なミスが大事故に繋がってしまうのが
バイクなのです。スピードをださなきゃ大丈夫という
乗り物ではないのです。
エンジンをかけた時から事故を起こさない
事故に合わない。
バイクに乗る者として、今一度、考えなおしましょう。
バイクを好きになり、一緒に走ったあなたへ。
どうか安らかにお休みください。
あなたの微笑を私は忘れません。
バイクに跨るたびに、あなたを思い出します。
私が死んで、あの世であなたに会えたら
又、微笑んでくださいね。
そして一緒にはしりましょうね。