この子には名前がない。
名前をつけることに少し躊躇していた。
もし、里親を探すのであれば、そこで名前をもらったほうがいいのではないだろうか・・・。
でも、里親がいつまでも見つからなければ、この子はいつまでたっても名無しの権兵衛のままだ・・・。
考えていることは同道巡り。。。
”イリス”
頭の中ではじけた言葉。
ポルトガル語で”虹”のことを”アルコ イリス”という。
ギリシア語で虹の女神のことを”イリス”というらしい。
そっと呼んでみる。
「イリス。」
その瞬間、この子は振り返った。
虹は幸せの象徴のようなイメージがある。
幸せになってほしい。
雨に震えず、雪に凍らず、飢えることを心配などせず。
陽だまりの中でのんびり、ゆっくりと誰からも愛しんでもらえるよう・・・
今日からこの子は、「イリス」になった。