1986年5月29日、あの子は勇気を振り絞って、外の世界へとダイブした。
あの子に続いて4匹の兄弟姉妹も次々にダイブし、そのダイブが彼らを死の淵から救った。
先陣を切った勇気ある男の子は、何故か『マリ』という女の子のような名前をもらうことになる。
家族に猫の魅力を余すことなく伝え、近隣のボス猫として君臨した『マリ』は、仔猫時代から大物の片鱗を見せていた。
強く、優しく、美しい!マリは三拍子揃った見事な猫でした。 マリと出会ったのは高校の通学路でした。
マリは4匹の兄弟姉妹とともに、通学路脇の工場の敷地内に捨てられていました。
友人とともに歩いていた私の前に飛び出してきたマリは、そのまま車道へと突っ込んでいこうとしたのです。
私は思わず抱きとめてしまいました。
私はマリを拾ったのではなく、ただ単に抱きとめたのです。
でもまだ純粋だった私は、それだけで『この猫に対する責任を負った』と思い込んだのです。
マリの幸運は、
私という少し変わった人間の前に飛び出したことにあったのかもしれません(苦笑)
ちなみにマリとともに捨てられていた4匹の兄弟姉妹は、同じ高校の家政科の子が連れ帰ったそうです。
私はマリの兄弟姉妹が、どういう猫生を生きたのか全く知りません。
春になると沢山の猫たちが、こんな風に道端に捨てられます。
でもマリのように幸運な猫はほとんどいません。
大多数がそのまま惨めで悲しい生を終えます。
私はそんな哀れな猫たちが、一匹でも少なくなることを願ってやみません。